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神様、私の命はいりません。
だから、だからどうか。
詩織ちゃんを返してください。
詩織ちゃんの命を……返して!!




「詩織、ちゃん……」

彼女はそうやって、静かに呟くと、膝から崩れ落ちるようにして床に座り込んだ。

「空乃、空乃!」

俺の問いかけに反応すらせず、彼女は写真を見つめていた。
その頬には、涙が一粒流れてた。

聞かずとも、もうここまできたらわかる。



「前に話しただろ。
確か、そう―……
俺がここに運ばれてきて、最初に目覚めたとき、空乃がいて。」

彼女は動かない。


「俺が唯一信じた少女……死んだって。
俺は今でもその子の容姿も性格も、全部全部覚えてんだよ。」

俺は彼女に近づいて、見下ろした。

「―その写真に映ってる、空乃の隣の少女が……詩織が……

俺を救ってくれた大切な人だって……!」

俺は、言いようの無い怒りにかられて、彼女を怒鳴りつけた。

彼女は、指一本動かさない。

「つまりは、こういうことだろ?空乃。」

嘲笑的に、俺は優しい声色で、彼女に問いかけた。


「”神”は空乃を選んだ」




彼女の目から、光がなくなって。


俺は……自らを振り返る余裕ができて、初めて、客観的に見て…後悔した。



「-ッ、今俺、何を……」



めちゃくちゃ最低なこと、口走ったんじゃないか俺?


「そ、空乃!今のなし!ごめん!!」


俺は慌ててしゃがんで、空乃の肩を揺さぶる。

すると。


「翔紀くん」


彼女はまばたきして、ゆっくり顔をあげた。

その顔は―……



「笑…顔……?」



「無理、しないでください。
今のが全部本音だって、私にはわかるんです。
そうです神様は私だけを助け、
詩織ちゃんを見殺しにしたんです。」

「空、乃……?」


空乃は立ち上がる。
俺も立ち上がって、彼女の…演説じみた言葉を、おとなしく聞いた。

「きっとそろそろ私にだって、
罰が下るんです。

詩織ちゃんが死んだってこと、都合のいいように忘れて、
翔紀くんをこんな気持ちにさせて、

…なのに私は今までこんなに平和に生きて。」

彼女の顔は、恐ろしいほどに穏やかだった。


「もうすぐ私には罰が下ります。」


「?!」


そういうと、彼女はポケットから、小瓶を取り出した。


「私はきっと。

そう長くない―……」



彼女から笑顔が消え、力が一気になくなったかのように、そのまま地面に倒れ―


俺はそれを支えて、気付いたら、病室を飛び出して、叫んでいた。


「助けてくれ!頼むから、誰か助けてくれ!!!」



”精神安定剤”

そう書かれたラベルは、地面にひらひらと落ちて、瓶は見事に砕け散った。





空乃が持ってた瓶の中身は、からっぽだった。

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