前回の続き。
今回からあらすじなくしました。
リンクもなくしました。
前回の見てない人は、メニューからどうぞ。(カテゴリーにあります)
私は1人、夜道を歩いていた。
何で1人なのかって?
実はさっき、篠野君の執事が家に来て、「午後9時にこちらへ来てください。」と言われたの。
だから、こちらと言われ渡された地図を手に、そこへ向かってるところ。
夜道を1人で歩くのなんか初めてだったから、ちょっとだけ怖かった。
車は普通に走ってるし、コンビニだってその辺にあって、賑やかなのに、不安な気持ちに潰されそうだった。
「え~と・・・地図によると・・・この辺なんだけどなあ・・・」
そこは、近くにある公園だった。
なんでこんな所に・・・しかもこんな時間に呼び出したのだろう。
「はあ・・・誰もいないじゃん・・・」
私がため息をつくと、後ろから肩を叩かれた。
「篠野くん?」
心の中の不安が一気に吹き飛び、後ろを振り返った。
「キミ、可愛いじゃん。オレ等と一緒に遊ぼうよ。」
「え・・・・」
全然、知らない男二名。
これって世に言う、ナンパって奴ですか?
「可愛くありませんから。」
私はそう言って、ふいと避ける。
「待てよ~1人なんだろ?ちょっと一緒に遊ぶだけじゃん。」
手を掴まれてしまった私は、振り払おうとするが、相手の力に敵わなかった。
「触んないでよ。」
「強気なのもいいよな~」
男は二人でケラケラと笑っている。
「教えてあげる。私のあだ名。」
「そんなのいいから、ちょっと来てよ!」
「私、カラスって呼ばれてるの。カラスだよ?ゴミをつっつく、カラス。この意味分かる?」
私は貧乏人。
お金持ちの篠野くんにカラスと馬鹿にされ、こんなとこに呼び出されて、振り回された挙句、しつこいナンパに困ってる。
「うっとおしいの。うざいの。さっさと消えて。」
「あぁ?オレ等にんな事いっていいのかよ?」
どん、と押され、私は壁にぶつかる。
「消えろっつってんだよ!うっとい!サイッテー!!」
ムカツク。怒りをそいつらにぶつける。
私はこういうヤツら、大キライ。
「女だからって調子こいてんじゃねえぞ!!!」
やっば!!殴られる・・・!!!!
ゴッー・・・
痛くなかった。
何故なら・・・
「ったく。にやってんだよ!」
篠野くんが助けてくれたから。
「お前!なんだ!!!」
グーの手が思いっきり壁に当たり、赤くなっている手をブンブン振りながら、男は篠野くんを指差し叫ぶ。
「・・・」
篠野くんはゆっくりと立ち上がり、男二人に向かって冷静な口調で・・・
「カラスがお世話になったようで。すみません。」
にっこりとひきつった笑いをし、半分キレ気味にそう言った。
顔が怖いですよ~篠野くん~。
「・・・クソッ!!!おい、逃げるぞ!」
男は、もう1人の男にそう言うと、公園から一目散に逃げていった。
公園に残った、へなへなと座り込んだままの私と、立って異様なほどキレてますオーラを出す篠野くん。
助けてもらったんだし、お礼くらいいった方がいいよね・・・。
「あの・・・ありが「あんたありえないよ。こんなしつこい男にナンパされるとか。」
へ・・・?
つか、せっかくお礼言おうとしてたのに、遮られたし。
「はー・・・やっぱり1人は危なかったね。オレが迎えに行けばよかった。」
や・・・優しいんだか、嫌味なんだか。
よくわかんない。
初対面の篠野くんは、優しいって思ったけど。
今はなんだか・・・・むかつく。
カラスって呼ばれ始めてから・・・かな。
「てか、ナンパ断る理由に使うくらい"カラス"って呼ばれるの嫌だったんだ。」
「だから、ずっと嫌だって言ってたじゃん。」
全く。
篠野くんはよくわからないよ、本当に。
「そっか・・・。じゃあ、"カラス"ってもう言わない。」
「え?」
カラス、封印ですか?
やったあ!もうカラスって呼ばれない!
なのに。
心が痛かった。
「・・・よ」
「え?」
きっと私は
「カラスって言ってもいいよ!」
「は?何で突然・・・嫌なんじゃ・・・」
"カラス"って言うのが篠野くんだけっていうコトが
「別に。気が変わったの!」
「めんど!!じゃ、カラスって呼んでも怒んない?」
二人だけのモノってコトが
「怒んないよ。」
嬉しいんだ・・・。
「ふーん・・・。あ、そうそう。ここに呼び出したのは・・・」
篠野くんは、なにやらごそごそと何かを取り出している。
「これ!一緒にやろう!!」
花火セットだった。
バケツに水も、ちゃんと入ってる。
「うん!やろう!!!花火、ずっとやりたかったの!!!」
一気にテンションが上がった。
「よっしゃ!じゃ、やるか!!!!」
「うん!!!」
生まれてきて、花火なんか一度もしたことなかった。
物心ついたころには、すでに私が下の子達の面倒をみなきゃ、って思ってたから。
お金の事に心配して、自分から何かをねだることなんかなかった。
「キャー!熱い熱い!!!」
「もっと離してやんなきゃあぶねえって!!」
二人でわーわーやってるのが楽しくて。
「花火って、こんなに楽しいものだったんだね!」
時間が止まってしまえばいいのにと思った。
そして私は気が付いてしまった。
篠野くんが、好きだという事。
線香花火がぽつりと地面に落ちたのと同時だった。